スペシャル対談vol.1

2015 / 07 / 03

「劇的な、生き方を」理念づくりの裏側と、その後。

9GATES代表 持田が、“劇的”な人物と対談していくこの企画。記念すべき第一弾は、数々の企業のブランディング・クリエイティブを手がける(株)パラドックスの代表、鈴木猛之氏との対談です。じつは9GATESの理念である「劇的な、生き方を」という言葉や行動指針は、両者の約1年間にわたるプロジェクトによって生み出されたもの。理念づくりの裏話や、言葉に込められた想い、募る話は山ほどあるが、まずはふたりの出会いから話はスタートしました。

株式会社パラドックス 代表取締役社長 鈴木 猛之

株式会社パラドックス 代表取締役社長鈴木 猛之

1969年福岡県生まれ。大学を卒業後、株式会社リクルートを経て、パラドックス・クリエイティブ(旧社名)を設立。「志の実現を応援する」というミッションを掲げ、企業のブランディングや、コンセプトメイクからプロモーションなどのクリエイティブを手掛ける。ロンドン国際広告賞ファイナリスト、N.Y.タイポグラフィックディレクターズアワード入賞、TCC審査委員長賞などを受賞。

株式会社9GATES 代表取締役 持田 知之

株式会社9GATES 代表取締役持田 知之

1976年福岡県生まれ。24歳で不動産業界へ、28歳で上京。「契約をとって終わりではなく、不動産という商材を通じて、もっと能動的に人を幸せにできないか」という想いから、2009年に9GATESを設立。現在は不動産事業に捉われず、インテリアや雑貨のプロデュース、レストランなど、ライフスタイルに関わる様々な事業を考案している。趣味はトライアスロン、サーフィン、料理。ときには、代表自らが社員の給食をつくる日もある。

設立たったの2年目、
人、物、金より大切だったこと。

鈴木初めてお会いしたのは、会社を設立してまだ間もない頃でしたよね?

持田たしか2年目の頃ですね。覚えてます?初めて飲みに行った時、僕、酔った猛之さんにヘッドロックされたの(笑)

鈴木そうそう。酔うとそんな癖があるみたいで…大変失礼しました(笑)

鈴木ところで、最初に会社のブランディングを考えはじめたのは、何がきっかけだったんですか?

持田そうですね。不動産営業を始めるずっと前から“人を幸せにして稼ぎたい”っていうのが頭の中にあったんですよ。ふつう営業(売り手)としては契約をゴールと設定しますよね。でもそうではなく、契約をスタートと考えて、一生かけてお客様を幸せにしていく。それを実現するために創ったのが9GATESだったんです。でも当時それは、僕の中で整理されていなくて人に語ることができなかったですし、言語化もされていなかったんです。

鈴木なるほど。

持田でも、会社を設立して、売上が伸び始めた頃にふと思ったんですよね。このままいくと危ないなって。“何のために会社をやるか”が言葉として明文化されていないと、描いていたのと違う会社になってしまう。きっと社員も何のためにウチで働いているかが判らなくなるのだろうなと。だから、当時、社員は設立メンバーしかいませんでしたけど、仲間を集める前にこそ、理念をしっかり創ろうと決めたんです。

鈴木その頃ちょうど出会ったんですね。本当に失礼な話なんですけど、ふだんはあまり、その規模感の会社に本気のご提案はできないんですよ。予算的に「いや、ウチにはまだ早いね」って仰る経営者の方も多いですし。でも持田さんは、じっくり腰を据えてブランディングをしましょうというご提案をした時に「いいよ、やろう!」って即断してくれた。その時「ああ、この会社伸びるな」って思いましたね。

持田いくら儲かっていても、旗印が無いまま、ただなんとなく働くのが嫌だったんですよ。器を先に買って、料理を決めるみたいなもんですよね。僕の頭の中がきちんと整理されて、理念が言語化されて、それに合せて会社が少しずつ変わっていく…

鈴木そうですね。でも最初は正直、何の会社なのかわからなかったんです(笑)もちろん不動産会社なんですけど、業界とか業種を超越した匂いがあったというか…。お若い頃の話で、常識外れな逸話も色々あったじゃないですか。“お客さんと大ゲンカになったけど、最後は契約をいただいた”とか(笑)ふつう不動産って聞けば、お金儲けが好きっていう人って多いと思うんですよね。それで結局、長続きしないみたいなことも多いような気がします。それよりも仲間とか、家族とか、そういう人の体温を凄く大事にしていましたし…

鈴木あと、なんて文句の多い社長なんだろうなって(笑)

持田今もそんなに変わりませんよ(笑)

鈴木最初お話をお伺いした時は、なんとなく“正義”みたいなものが、理念になるのかなって思ったんですね。だから“冷めた世の中を世直しするぜ”とか。でももっと深く聞いていくと違って、“何をするか”よりも“どういう手段でするか”の方がもっと大事だった。そのキーワードが「劇的」、ようは「ドラマティック」だったんですよ。

持田そうですね。「劇的な、生き方」っていうのは移動方法ですね。どこに行きたいか、何がしたいかと言われば「人を幸せにして稼ぎたい」っていうことなんですよね。「正義」っていうのも大事なんですけど、向いてないんですよ(笑)例えば、事業を通じて世の中の不便をなくすとか、お年寄りの老後に安心を…みたいな。

鈴木確かに、似合わない(笑)

持田世の中にウケることが目的ではありませんからね。正直、世の中の人を皆幸せに出来るなんて思わないんですよ。でも、自分がちょっとでも関わった人が不幸になるのは嫌です。身内に対する想いというか、幸せにするんだったら、どうせなら自分が幸せにしたいんです。

鈴木敢えて時代と逆行していく感じがありますよね。バーチャルなコミュニケーションが多くなっていく中で、もの凄くリアルで、生身で感じられる熱さを何より大事にしている。喜怒哀楽を思いっきり味わって、日常が日常で無くなるというか…。御社が新入社員向けにやっている屋久島研修※なんて、まさしくそうですよ。もう自分を極限の状態まで追い込んで、皆で最高の達成感を味わうみたいな…。※屋久島研修/9GATESの新卒社員は1ヶ月の新入社員研修の締め括りとして、2泊3日の屋久島合宿を行うのが恒例となっている。

持田全員、生きて帰ってこれて良かったです(笑)

自分にしかできない仕事はなんですか?

鈴木理念が言葉になるまで、約半年くらいのプロジェクトでしたが、「劇的な、生き方を」という理念と「正義の9箇条※」ができるまで、本当に紆余曲折ありましたね。言葉だけでも300本〜400本くらいは考えたような…※正義の9箇条/9GATESの行動指針

持田これがね、面白くって「劇的な、生き方を」という言葉が決まった時、じつは全然ピンと来てなかったんですよ。今だから話せることですが(笑)たぶん自分の中で、まだストーリーに出来ていなかったんでしょうね。でも、その瞬間から自分の中に“絶対的なルール”ができたのが良かったと思います。人間って弱いですから、色んなことから逃げてしまうじゃないですか。例えば、道で困っている人を見かけたら助ければいいのに、周りの目を気にしたり、忙しいからと見て見ぬふりしてしまう。でも“どんな状況であろうと助けるものは助ける”ってルールを決めていれば、自然と手が出る。もしその言葉がなかったら、やらない理由を考えてしまいますからね。

鈴木そういうルールって、もともとは宗教みたいなものかもしれませんが、やっぱり人間にとって必要だと思うんですよね。今、日本って宗教みたいなものが嫌厭されがちですから、その役目に果たすのは企業なんじゃないかと僕は思うんです。だから海外の企業より日本の企業の方が、働く社員が共感できる企業理念をちゃんと構えて、大事にしていくべきだと思いますね。

持田僕、考えたことがあるんです。なんで海外には宗教があって、日本にはそんなに宗教が浸透してないのかって。やっぱり海外は多民族国家が多いじゃないですか。だから宗教というルールを決めないと組織化ができなかったんじゃないかと。日本はもともと藩で構成されていて、その藩ごとの厳しい“教え”がありましたから。例えば、白虎隊「什の掟※」の“弱い者をいぢめてはなりませぬ”とか。当時はそれが絶対だったんですよね。※什の掟 / 会津藩士の子供たちが集まる「什」で、会津武士の“心構え”を身につけさせるために、什長が申し聞かせた話のこと。

鈴木ああ、そうかもしれないですね。今はその教えを怖がっている人も多い気がします。

持田そうですね。猛之さんがおっしゃる通りで、企業が“教え”を担っていかないとダメだと思います。9GATES正義の9箇条も、9GATESの言葉ではあるものの、至極一般論なんですよね。だから、これを実践できれば、どこの会社でも成功すると思いますし。ウチらしい言葉で、そういう基準が出来たところは良かったなと思います。

鈴木僕から見ていて、生まれた言葉に合わせて、持田さんがどんどんコンセプチュアルになっていくのが凄くわかるんですよね。もちろん、これが究極の正解かどうかは判らないけど、一旦これを信じてやってみようって思ってらっしゃるはずだし。この言葉を踏まえて社員教育をどうするか、お客さんとどう付き合っていくか、ってストーリーを組み立てていかれている感じがします。ちゃんと言葉が生きていると思います。銀座ショールーム※も、本当に劇的になりましたし。※銀座ショールーム/9GATESは2012年、オフィスの移転とともに、カフェスペースであるショールームを開設した。

持田新しいオフィス作りはすごく楽しかったですね。社員皆に内緒で、もの凄いオフィスを作って、サプライズでお披露目したんです。初めてオフィスに入った瞬間の「ワーー!!!」っていう、皆の顔を想像したら楽しみで楽しみで(笑)そういうサプライズも劇的でしたね。さっきの宗教の話じゃないですけど、理念や行動指針が9GATESの聖書だとしたら、間違いなくここは教会として、皆が同じ想いを持って集う場所になっていますよ。

鈴木この先は、どうしていきたいんですか?

持田自分の人生年表で言うと、僕は48歳でビジネスリタイアするつもりなんですよ。48歳で、お金のために働くのを辞めて、学校を創ろうと本気で思っています。まずはこの先5年かけて、自分がいなくても動いていく会社をつくっていきたいですね。あまり会社の規模を大きくしていくことは、自分にはしっくりくる感じがしません。

鈴木なるほど(笑)

持田“忘年会の出し物どうするか”“どうやってメンバーや、キャスト※に喜んでもらおうか”って考えている方が、よっぽど僕らしいですね(笑)そう考えると、好きな仲間がいて、自分たちが楽しいと思うことが常にやれて、でも一人ひとりが大企業に負けないくらいしっかり稼いでいて、毎日ワクワクしながら働ける会社って、規模でいうと100人くらいだと思うんですよ。いつまでも血が通っていると実感できる会社ではありたいですね。※キャスト/お客様のことを9GATESではキャストと呼んでいる。

持田逆に猛之さんに聞きたかったんですけど、会社の究極の目的は何だと思いますか?

鈴木そうですね。僕は運命論者※ではないんですが、やっぱり世の中に対して“9GATESにしか出来ないことをやり続ける”“独自の価値を提供し続ける”ことだと思うんですよ。それが出来ないのであれば、お客様からしたら、他の会社でもいいわけですから。「いや、あの会社も、この会社も劇的なんだよ」という世の中であれば、変えた方がいいと思いますけど、そんなことを理念に据えている会社はありませんから(笑)※運命論/世の中の出来事はすべて、あらかじめそうなるように定められているという考え方

持田企業もそうですけど、社員も、何か社会に対して自分がいる意味みたいなものを、求めているんですよね。

鈴木若い人ほど求めている気がします。青臭いかもしれないけど。弊社では、理念の中に「志」という言葉を掲げてますけど、やっぱり世の中に対して、その人しか出来ないことを確立していくことが目的ですからね。アンパンマンの歌※みたいに。※アンパンマンのマーチ/歌詞の中に「何の為に生まれて 何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは嫌だ!」という一節がある。

持田なるほどね。自分しか出来ないこと…。

鈴木もう、それが見つかることは、本当に幸せなことだと思うんです。でも志というものは、世の中の皆が拍手することじゃなくてもいい。誰か特定の人が「それ最高ですね!」って言ってくれれば良いんですよね。多少、歪んでいてもいいから、貫き通したほうがいい…

持田もしかして、それ、僕の話ですか?(笑)

鈴木いえいえ(笑)…今日はお呼び頂きありがとうございました。続きはまた、飲みながら。

持田こちらこそ、ありがとうございました。でも、今度はあまり飲みすぎないでくださいね(笑)